「正統的周辺参加」と「発達の最近接領域」は、状況的学習論の立場に基づく考え方です。
状況的学習論は、学習とは様々な社会的活動に関わることだと考えます。
ちょうど1人で机に向かって勉強するというような、個人的な学習観とは正反対です。
正統的周辺参加
正統的周辺参加( LPP:Legitimate peripheral participation)は、ジーン・レイヴとエティエンヌ・ウェンガーが提案した概念です。
2人は、複数の徒弟制度のフィールドワークやインタビューを通してこの考えを生み出しました。
正統的周辺参加は、実践コミュニティや共同プロジェクトにおいて、新参者が経験豊富なメンバーになり、最終的には古参者になるプロセスが学習であると考えます。
正統的周辺参加によれば、学習とは文脈的な社会現象であり、コミュニティの実践に参加することで達成されると考えます。
発達の最近接領域
発達の最近接領域(ZPD:zone of proximal development)は、心理学者のヴィゴツキーが提案した概念です。
ヴィゴツキーによれば、子どもには1人で問題解決が可能な発達レベルと、周囲の大人の助けを借りても1人では問題解決できないレベルがあり、その中間に、1人では解決できないが周囲の援助があれば解決できるレベルがあるとします。
この中間にあたる、1人では解決できないが周囲の援助があれば解決できるレベルを発達の最近接領域と呼びました。
たとえば、自転車の乗り方を練習するときに、1人で乗るのは無理だが、「補助輪」や周囲の助けがあれば乗れるというような段階です。
そして、その援助のことを「スキャフォールディング(足場かけ)」と呼びました。
さらに、この流れから登場したのが「ピア・ラーニング(協働学習)」です。
ちなみに、この発達の最近接領域を考えたヴィゴツキーはロシアの心理学者で、わずか37歳で亡くなっています。彼は短い生涯の間に数多くの研究を発表したことから、「心理学のモーツァルト」とも言われています。
まとめ
正統的周辺参加と発達の最近接領域は、ともに様々な社会的活動に関わるプロセスを学習と考えてており、個人的な学習観とは正反対なのが特徴です。
この流れからピア・ラーニング(協働学習)が生まれた点も重要だと思います。