日本語の条件の表現に「と、ば、たら、なら」があります。
それぞれどう違うのでしょうか?
簡単にまとめました。
1.「と」
動詞 / イ形容詞 = 辞書形 + と
例:買う と
ナ形容詞 / 名詞 + だ + と
例:静か だ と
1.「反復的、恒常的」な表現に使う
特に、自然現象、習慣、機械の操作でよく使います。
- 春になる と、桜が咲く(自然現象)
- ボタンを押す と 、電気がつく(機械の操作)
2.「過去の出来事」「発見」に使う
- 目を覚ます と、知らない人の部屋にいた。(過去の出来事)
- 改札口を出る と、目の前に大きな壁画が見えた。(発見)
3.後ろに「意志、勧誘、命令」などが来ない
条件の「と」は、後ろに「意志、勧誘、命令」などが来ません。
- 学校が終わる と、塾に行く。
学校が終わる と、塾に行きましょう。(勧誘)学校が終わる と、塾に行きなさい。(命令)
2.「ば」
第一動詞=~え(e) + ば
例:買え ば
第二動詞 =~れ(re) + ば
例:食べれ ば
イ形容詞=~けれ(kere)+ ば
例:大き けれ ば
ナ形容詞 / 名詞 + なら + ば
例:静か なら ば
1.「仮定、反復的な表現、一般法則、ことわざ」に使う
- 新型コロナウイルスの流行が収まれ ば、何をしますか?(仮定)
- 風が吹け ば 桶屋が儲かる(ことわざ)
2.後ろに「意志、勧誘、命令」などが来ない
条件の「ば」は、基本的に後ろに「意志、勧誘、命令」などが来ません。
外に出れ ば、必ずマスクをつけなさい。
ただし、例外として、(1)前の文が状態述語の場合は意志、勧誘、命令が可能です。
状態述語とは、形容詞、動詞の一部、判定詞、「忙しい」「いる」「ある」などのことです(動作を表すのは「動態述語」)。
また、(2)前と後ろの文の主語が違う場合も、意志、勧誘、命令が可能です。
- マスクが売っていれ ば、いっぱい買おう。(勧誘)
- 両親が許してくれれ ば、1人暮らしをするつもりです。(意志)
3.「事実」には使えない
既に起こっている事実(過去に一回だけ起こった出来事)には使えません。
昨日、部屋のスイッチを押せ ば、すぐに電気がつきました。- 昨日、部屋のスイッチを押す と、すぐに電気がつきました。
3.「たら」
動詞 / イ形容詞 / ナ形容詞 = タ形 + たら
例:雨が降っ たら
名詞 + だっ + たら
例:夫 だっ たら
1.「特定的、一回的」な出来事
「特定的、一回的」な出来事によく使います。
- 雨が降っ たら、運動会は中止です。
2.後ろに「意志、勧誘、命令」などが来る
「と」「ば」と違い、「たら」は後ろに意志、勧誘、命令などが来ます。
- 休みになっ たら、旅行に行きましょう。(勧誘)
3.前の文が仮定なら「ば」と置き換え可能
- 新型コロナウイルスの流行が収まっ たら、何をしますか?(仮定)
- 新型コロナウイルスの流行が収まれ ば、何をしますか?(仮定)
4.「なら」
動詞 / イ形容詞 / ナ形容詞 = 辞書形 + なら
例:買う なら / 見る なら
動詞 / イ形容詞 / ナ形容詞 = タ形 + なら
例:買った なら / 見た なら
名詞 + なら
例:大人 なら
「なら」は、「と」「ば」「たり」とは少し違います。
1.後ろに「意志、勧誘、命令」などが来る(話し手の気持ち)
- ずっと家にいるの なら、家事を手伝って。
2.時間の前後関係が、前の文→後の文とはならない。
「と」「ば」「たり」は、前の文がそのまま前の時間となり、後の文がそのまま後の時間となりますが、「なら」は前の文が後の時間となり、後の文が前の時間となることがあります。
- 乗る なら、飲むな。(時間的には「乗る」が後で、「飲む」が前)
ちなみに、平成27年度の日本語教育能力検定試験で「なら」に関する問題が出ています。
まとめ
- 「と」は「反復的、恒常的な表現」「過去の出来事」「発見」に使う、後ろに意志、勧誘、命令などが来ない
- 「ば」は「仮定、反復的な表現、一般法則、ことわざ」に使う、後ろに意志、勧誘、命令などが来ない、事実には使えない(ただし、前の文が状態述語、前と後の文で主語が異なる場合は可能)
- 「たら」は「特定的、一回的な出来事」に使う、後ろに意志、勧誘、命令などが来る、前の文が仮定なら「ば」と置き換え可能
- 「なら」は後ろに話し手の気持ちが来る、時間の前後関係が、前の文→後の文とはならない