「平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験問題」の試験Ⅰの解説です。
問1
「唇のまるめ」の問題です。
唇のまるめは、母音を発声する時に唇をまるめるかどうかです。
日本語の母音「/a/, /i/, /u/, /e/, /o/(アイウエオ)」の5つの中で、「o(オ)」だけが唇をまるめて発音します。
そのため、答えは4です。
問2
4の電気+代だけ、アクセントの位置が変化します。
実際に発音してみるとわかりますが、「電気」は最初にアクセントがありますが、「電気代」になると、アクセントが真ん中以降に変化します。
電 気
電 気 代
問3
ローマ字の問題です。ローマ字には、ヘボン式、日本式、訓令式の3つがあります。
5だけ「syumi」と日本式・訓令式で書かれており、ほかはすべてヘボン式(chiriやshigoto)なので、5だけ違います。そのため、答えは5です。
ちなみにヘボン式は「shumi」です。
問4
「オノマトペ」の動詞化の問題です。オノマトペは、「にやにや」などさまざまな状態や動きなどを音で表現した言葉で、擬音語・擬声語・擬態語のことです。
このオノマトペに「する」をつけて、動詞にできるどうかを考えます。
- にやにや する 〇
- いらいら する 〇
- せかせか する 〇
- くよくよ する 〇
- へとへと する × →へとへとになる
5の「へとへと」だけ「する」がつけられない(「へとへとになる」)ので、5が正解です。
問5
接頭辞「新」の意味に関する問題です。
正直難しくてわかりませんでした・・・。
ただし、「意味」というのがポイントで、1つだけ意味の違う言葉を選ぶということだと思います。文法などの問題ではありません。
答えは3の「新品」ですが、これだけ「すでに世の中に登場していて、状態が新しいもの」という意味があります。
しかし、たとえば「新商品」の場合、これまで世の中にはなかったもので、新しく登場したという意味があります。
具体的な例で考えてみます。
- ユニクロの服の 新品
- ユニクロの服の 新商品
2つの違いは、「ユニクロの服の新品」は、すでに売られているもので、状態が新しいものです。一方、「ユニクロの服の新商品」は、まだ売られていないもので、新しく登場するものです。
ほかにも「新成人」も、20歳になったことで、新しく世の中に登場した人たちです。
「新しく世の中に登場するもの」かどうかで選ぶと良いかもしれません。
問6
「から」の用法の問題です。
2だけ「危ないから」と注意の意味があると思います。そのほかは理由・原因です。
問7
「うちに」の用法の問題です。
これは難しいと思いました。
2だけ主語が社長で第三者です。ほかは主語が自分です。
問8
1の「意外に話せる部長だ」だけ、話せるの意味が「物わかりがよい、話がわかる」という意味です。
ほかは「~できる」という可能の意味だと思いました。
問9
動詞の項の問題です。
動詞には一項動詞、二項動詞、三項動詞の3つがあります。
一項動詞は「~が」の形、二項動詞は「~が~を、~が~に、~が~と」の形、三項動詞は「~が~を~に」の形を取ります。
選択肢を見てみると、4の借りるだけ三項動詞で、ほかは二項動詞です。
- 車 が 壁 に ぶつかる→二項動詞
- 彼 が ごはん を 食べる→二項動詞
- 生徒 が 先生 に 刃向かう→二項動詞
- 彼 が 本 を 友だち に 借りる→三項動詞
- 彼 が 彼女 と 結婚する→→二項動詞
問10
漢語の構造の問題です。
ほかの4つは形容詞+名詞の形ですが、5の「低下」だけは違うと思います。
- 無力→力が無い
- 高音→音が高い
- 多額→額が多い
- 少数→数が少ない
- 低下→??
これは漢語の分析という論文が参考になりました。
問11
「なら」の用法の問題です。
ならの典型的な用法は、聞き手の発言を受ける用法です。聞き手の発言で新しく知ったことが前件になり、それに基づく帰結が後件として述べられます。
- 英語は少しなら話せるよ(話し手の判断、限定する)
- 課長ならさっきお帰りになりましたよ(事実を述べる、話題にする)
- あの店になら置いてあるんじゃない?(話し手の判断、限定する)
- カレーなら作れるんだけど(話し手の判断、限定する)
- ゆっくりとなら歩けます(話し手の判断、限定する)
2だけ、聞き手の発言を受けた後に「事実(話題にする)」が述べられており、ほかは聞き手の発言を受けた後に「話し手の判断(限定する)」が述べられていると思います。
問12
逆接条件の表現の問題です。
3だけすでに起こった事実を述べていますが、ほかは仮定の逆接だと思います。
問13
「上で」の用法の問題です。
4だけ「~した後で」の意味があると思います。
ほかは、「目的」の意味だと思います。
問14
「取り立て助詞の対象」の問題です。これが一番難しかったです。
5の「でも」だけが名詞が対象で、残りは動詞が対象です。
「でも」は名詞について、例示の意味を表わしたり、それがことがらを成立させる最低限のものであること、そのもの以外にことがらを成立させるもっとよいものがたくさんあることを暗示したりします。
問15
複合名詞と複合動詞の対応についての問題です。
選択肢の複合名詞に対応する複合動詞があるかを考えます。
- 着回し→着回す 〇
- 持ち込み→持ち込む 〇
- 見直し→見直す 〇
- 走り書く→走り書く × *走り書きするは〇
- やり過ぎ→やり過ぎる 〇
「走り書く」だけ対応する複合動詞がないので、4が正解です。
「現代日本語における複合動詞と「V1+V2」型複合動名詞との意味形成の差異について : 生産性を手がかりとして」という論文が参考になりました。