「平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験問題」の試験Ⅰの解説です。
問1
「調音法」の問題です。
日本語には、「鼻音」「破裂音」「摩擦音」「破擦音」「弾き音」「接近音」の6つがあります。
1つだけ調音法が違うものを探します。
- [g]-破裂音
- [m]-鼻音
- [t]-破裂音
- [b]-破裂音
- [k]-破裂音
[m]だけ鼻音で、ほかはすべて破裂音です。
鼻音は「鼻を使って発音する音声」です。日本語だと「な行」と「ま行」、そして「ん」が鼻音です。
破裂音は、「口腔内で閉鎖を作って気流が逃げないようにした後、閉鎖を開放した瞬間に発する音」です。
実際に発音してみるとなんとなくわかると思います。日本語だと、カ行、タ行、パ行などが破裂音になります。
参考記事:日本語の子音、声帯振動、調音点、調音法、音声記号まとめ(口腔図つき)
問2
語頭子音の調音点の問題です。要するに、単語の一番最初に来る子音のことです。
調音点は、子音を出すときの呼気の妨害をする場所のことです。
調音点は主に6つ(「両唇」「歯茎」「歯茎硬口蓋」「硬口蓋」「軟口蓋」「声門」)あり、子音によって異なります。
- ジュエリー=「ジ」→歯茎硬口蓋
- ティッシュ=「テ」→歯茎
- チョコレート=「チ」→歯茎硬口蓋
- ショッピング=「シ」→歯茎硬口蓋
- チャンス=「チ」→歯茎硬口蓋
2の「ティッシュ」の「テ」だけ「歯茎」で、ほかはすべて「歯茎硬口蓋」です。
これは実際に自分で発音してみるとわかりますが、「テ」だけ場所が歯茎になっていることがわかります。
参考記事:日本語の子音、声帯振動、調音点、調音法、音声記号まとめ(口腔図つき)
問3
複合語のアクセントの問題です。
複合語は、2つ以上の単語が複合して1つの単語になったものです。
複合語のアクセントは、単語を個別に言うときとは異なる場合があります。
この問題は、個別の単語と、複合語でアクセントが違うものを選びます。
- 専門(せんもんー低高高高)→専門店(せんもんてんー低高高低低低)
- 柔軟(じゅうなんー低高高高)→柔軟性(じゅうなんせいー低高高高高高)
- 教育(きょういくー低高高高)→教育的(きょういくてきー低高高高高高)
- 食事(しょくじー低高高)→食事代(しょくじだいー低高高高高)
- 説明(せつめいー低高高高)→説明書(せつめいしょー低高高高高)
1の「専門店」だけ、「専門」の時の発音と異なり、最後の「店」が低音のアクセントに変わります。
問4
「自他動詞の形態」の問題です。自動詞と他動詞で形が違うものを選びます。
- 荒らす(他動詞)ー荒れる(自動詞)
- 揺らす(他動詞)ー揺れる(自動詞)
- 散らす(他動詞)ー散る(自動詞)
- 慣らす(他動詞)-慣れる(自動詞)
- 垂らす(他動詞)ー垂れる(自動詞)
3の「散らす」だけ自動詞の形が異なるので、3が正解です。
問5
「複合動詞の名詞化」の問題です。動詞にしてみて、違うものを一つ選びます。
- 貸し出し→貸し出す
- 見落とし→見落とす
- 話し合い→話し合う
- 立ち読み→立ち読む×立ち読みする〇
- 書き直し→書き直す
4の「立ち読み」だけ動詞にすると形が異なる(立ち読みする)ので、4が正解です。
問6ー難
「形容詞連用形の働き」の問題です。これは難しいと思いました。
- 真剣に→「考える」を説明する(真剣に考える)
- 柔らかく→「方言」を説明する(方言は柔らかい)
- 若く→「私」を説明する(私は若い)
- 不思議に→「その話」を説明する(その話は不思議だ)
- 涼しく→「今日(の気温)」を説明する(今日は涼しい)
1の「真剣に」だけ後件の動詞「考える」を説明しています。
ほかの4つは、前件のものを説明しています。
問7
「複合動詞の意味」の問題です。
「複合動詞の上げる」には「上方向移動」や「完了」の意味などがあります。
- くみ上げるー上方向移動
- 書き上げるー完了
- 込み上げるー上方向移動
- 読み上げるー上方向移動
- 取り上げるー上方向移動
2の「書き上げる」だけ「完了」の意味で、そのほかは「上方向移動」の意味です。
参考記事:日本語における複合動詞の後項動詞
問8
指示詞の現場指示と文脈指示の問題です。
まず、指示詞は「これ・ここ・こちら・この」「それ・そこ・そちら・その」「あれ・あそこ・あちら・あの」です。
この指示詞の用法には、現場指示の用法と文脈指示の用法があります。
現場指示の用法は、目にみえる事物を指し示すときに用います。
文脈指示は、話題に出てくる事柄など、目に見えないものを指し示すときに用います。
- 「ああ、そんなこともありましたね」→文脈指示です。
- 「それでは、こうしたらどうでしょう。・・・」→文脈指示です。
- 「、この人がまた・・・」→文脈指示です。
- 「そうか、ここを押せばいいんですね。」→現場指示です。
- 「それはいいね!」→文脈指示です。
「4」だけ目にみえる事物を指し示しているので、現場指示です。
問9
形容詞の種類の問題です。
形容詞には、感情形容詞と属性形容詞があります。
感情形容詞は、「人の感情を表す」形容詞です。たとえば、「こわい、恐ろしい、悲しい、うれしい、つらい、苦しい、楽しい」などです。
属性形容詞は、「物や人の性質を表す」形容詞です。たとえば、「大きい、小さい、高い、低い、長い」などです。
- 懐かしい→感情形容詞
- 古い→属性形容詞
- おとなしい→属性形容詞
- 安い→属性形容詞
- おいしい→属性形容詞
1の「懐かしい」だけ感情形容詞です。あとは物や人の性質を表す属性形容詞です。
私は「おいしい」と間違えてしまったのですが、「おいしい」は属性形容詞です。
問10
「ために」の用法です。
「ために」は、(1)「目的」、(2)「理由」、(3)「人物・団体に対する利益」の3つの用法があります。
- 出産のために→「目的」
- 留学のために→「目的」
- 仕事のために→「目的」
- 健康のために→「目的」
- 両親のために→「人物・団体に対する利益」
問4だけ「両親」と人物なので、(3)「人物・団体に対する利益」の用法です。
問11
複合要素の統語的関係です。
統語構造は、主述関係や、修飾被修飾関係など、文法的な関係が認められるものです。
- 手書き→手で描く→「手段」
- 砂遊び→砂で遊ぶ→「手段」
- 鉄板焼き→鉄板で焼く→「手段」
- 沖釣り→沖で釣る→「場所」
- 酒蒸し→酒で蒸す→「手段」
4の沖釣りだけ、デ格の前が「場所」(沖)で、ほかはすべて「手段」です。
問12
「ことにする」の用法です。
- キャンセルすることにして→事実
- 風邪を引いたことにして→嘘
- 引っ越すことにした→事実
- 自炊することにした→事実
- 食べることにして→事実
「2.風邪を引いたことにして」だけ「嘘」で、あとは「事実」です。
問13
内の関係・外の関係です。
内関係は、修飾節中の述語と底との間に格関係があります。
外関係は、格関係がありません。
- 小物を入れる箱→箱に小物を入れる(内の関係)
- 昨日読んだ本→本を昨日読んだ(内の関係)
- 初めて会った公園→公園で初めて会った(内の関係)
- 階段を下りる音→?(外の関係)
- 遅刻した人→人が遅刻した(内の関係)
4だけ各関係が成立しないので、外の関係です。
問14
「の」の用法の問題です。
「の」で結ばれた2つの名詞がイコールの関係にあるかを調べます。
- 出身地の大阪→出身地=大阪〇
- 同級生の山下君→同級生=山下君〇
- 首都の東京→首都=東京〇
- 妹の桂子→妹=桂子〇
- 本社の田中さん→本社=田中さん×
5だけ本社と田中さんはイコールの関係になりません。
問15
使役表現の問題です。
使役表現には、「強制」「許容」「原因」「責任」の意味があります。
- アンケートに答えさせた→強制
- 掃除させた→強制
- 電気を消させた→強制
- 使いにやらせた→強制
- 子どもを死なせた→責任
5だけ責任の意味です。
問16
動詞のタ形の問題です。
動詞のタ形には、「過去」と「完了」の意味があります。
完了は、過去の状態が現在も継続しています。
- お店があった→過去(過去の状態が継続していない、過去に店があったが現在はない)
- ノートが曲がった→完了(過去の状態が現在も継続している)
- 木が折れた→完了(過去の状態が現在も継続している)
- 運動会が中止になった→完了(過去の状態が現在も継続している)
- 春になって雪が溶けた→完了(過去の状態が現在も継続している)
1だけ過去の状態が継続していません。