日本語教育能力検定試験によく出題される、変音現象(へんおんげんしょう)のまとめです。
変音現象は、複合語・合成語を作る時に生じる音の変化です。変音現象にはいくつか種類があるので、以下でそれぞれを紹介します。
1.「連濁(れんだく)」
後ろの語の最初の音が濁音(だくおん)になる現象です。
後ろの語の最初の音が「カ行」「サ行」「タ行」「ハ行」である場合に連濁します。
例:「ごみ」(前の語)+「はこ」(後ろの語)=「ごみばこ」(は→ば)
ごみ + はこ = ごみばこ
- 「ほん」+「た な」→「ほん だ な(本棚)」(た→だ)
- 「おし」+「は な」→「おし ば な(押し花)」(は→ば)
- 「わらい」+「こ え」→「わらい ご え(笑い声)」(こ→ご)
- 「かみ」+「か み」→「かみ が み(神々)」(か→が)
「連濁の例外」
また、連濁には例外があり、連濁の条件を満たしていても連濁しない場合があります。
1.「複合動詞」
2.「2語が並列的で関係のないもの」
「山川(やまかわ)」など
3.「漢語、外来語」
連濁を起こすのは基本的に和語が多く、漢語や外来語は非常に少ないそうです。
4.「ライマンの法則」
また、連濁の例外として、ライマンの法則があります。
ライマンの法則は、後ろの語にすでに濁音がある場合は、連濁が起こらないというものです。
明治時代に日本に招かれたベンジャミン・スミス・ライマンによって発見された法則です。
たとえば、「はる(春)」 + 「かぜ(風)」が合成すると「はるかぜ(春風)」になります。「はるがぜ」とはなりません。これは「かぜ(風)」にすでに濁音があるからです。
はる + かぜ = はるがぜ → はるかぜ
しかし、ライマンの法則にも例外があります。たとえば、「縄梯子」の場合、「はしご(梯子)」には濁音がすでにありますが、連濁します。
なわ + はしご = なわはしご → なわばしご
2.「転音(てんおん)(母音交替)」
転音は、前の語の後ろの音の母音が替わる現象です。
たとえば、「あめ(雨)」(前の語)と「かさ(傘)」(後の語)という単語が合成されると、「あまがさ(雨傘)」になります。このとき、「あめ(雨)」(前の語)の後ろの音である「め」が「ま」に替わります
- 「あ め」+「かさ」=「あ ま がさ」(め→ま)
- 「さ け」+「たる」=「さ か だる」(さ「け」→さ「か」)
- 「か ぜ」+「かみ」=「か ざ かみ」(か「ぜ」→か「ざ」)
3.「音便(おんびん)」
単語中の音が、イ(イ音便)、ウ(ウ音便)、ッ(促音)、ン(撥音)に変わる現象です。
「イ音便」
語中や語尾の「キ」「ギ」「シ」が、「イ」音になる現象です。
- 「書 き」+「て」→「書 い て」(き→い)
「ウ音便」
語中や語尾の「く」「ぐ」「ひ」「び」「み」などが「ウ」音になる現象です。
現代語では、形容詞の連用形に「ございます」「存じます」などが続くときに多く現れる。
- 「白 く」+「ございます」→「白 う ございます」(く→う)
- 「なつかし く」+「ございます」→「なつかしゅ う ございます」(く→う)
「促音「ッ」」
活用語の連用形の語尾「チ」「ヒ」「リ」の後に「テ」「タ」「タリ」などの語が続くとき、連用形の語尾が「ッ」になる現象です。
- 「立 ち」+「て」=立 っ て(ち→っ)
- 「走 り」+「て」=走 っ て(り→っ)
「撥音「ン」」
活用語の連用形の語尾「ニ」「ミ」「ビ」の後に、「テ」「タ」「タリ」などの語が続くとき、連用形の語尾が「ン」となる現象です。
助詞「テ」は「デ」となることが多いです。
- 「死 に」+「て」→「死 ん で」(に→ん)
- 「飛 び」+「て」→「飛 ん で」(び→ん)
- 「読 み」+「て」→「読 ん で」(て→ん)
4.「音韻添加(おんいんてんか)」
元はない音が添加される現象です。
- 「はる」+「あめ」→「はる さ め」(「s」が新たに付け加わる)
5.「音韻脱落(おんいんだつらく)」
合成された語に、元にあった音がなくなる現象です。
- 「はだ か」+「あ し」→「はだし」(「か」と「あ」がない)
6.「音韻融合(おんいんゆうごう)」
前の要素の末尾と、後の要素の先頭の音が融合する現象です。
- 「か り」+「う ど」→「か りゅう ど(狩人)」
7.「連声(れんじょう)」
後の語の音が「ナ行」「マ行」「タ行」の音に変化する現象です。
前の語の音が「ン」「チ」「ツ」で、後の語の音が「ア行」「ヤ行」「ワ行」の場合に生じます。
- 「いん」+「え ん」→「いん ね ん(因縁)」
- 「ぎん」+「あ ん」→「ぎん な ん(銀杏)」
- 「はん」+「お う」→「はん の う(反応)」
8.「半濁音化(はんだくおんか)」
「ハ行」の音が「パ行」の音に変化する現象です。
*ちなみに、半濁音とは「ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ・ぴゃ・ぴゅ・ぴぇ・ぴょ」のこと。半濁音につく丸状の記号「゜」は、半濁点と呼ばれる。
例:
- 「ぜつ」+「ひ ん」→「ぜっ ぴ ん(絶品)」
- 「しん」+「は ん」→「しん ぱ ん(審判)」
まとめ
- 連濁は後ろの語の最初の音が濁音(だくおん)になる現象。「ごみ」+「は こ」→「ごみ ば こ」など
- 転音は前の語の後ろの音の母音が替わる現象。「あめ」+「かさ」→「あ ま がさ」など
- 音便は単語中の音がイ(イ音便)、ウ(ウ音便)、ッ(促音)、ン(撥音)に変わる現象。「書 き」+「て」→「書 い て」など
- 音韻添加は元はない音が添加される現象。「はる)」+「あめ」→「はる さ め」など
- 音韻脱落は合成された語に、元はあった音がなくなる現象。「はだ か」+「あ し」→「はだし」など
- 音韻融合は前の要素の末尾と、後の要素の先頭の音が融合する現象。「かり」+「うど」→「か りゅう ど」など
- 連声は後の語の音が「ナ行」「マ行」「タ行」の音に変化する現象。「いん」+「えん」→「いん ね ん」
- 半濁音化は「ハ行」の音が「パ行」の音に変化する現象。「ぜつ」+「ひ ん」→「ぜっ ぴ ん」