学習者中心の教授法である、コミュニカティブ・アプローチ、タスク中心の教授法、ナチュラル・アプローチのまとめです。
これらは日本語教育能力試験でよく出題されます。
1.「コミュニカティブ・アプローチ」
コミュニカティブ・アプローチは、1970年代初頭にヨーロッパから世界に広まった教授法です。オーディオリンガルメソッドの次に注目されるようになりました。
それまでの教授法には、文法的に正確な文は作れるが実際のコミュニケーションは向上しないなどの欠点がありました。
「理論的基盤」
コミュニカティブ・アプローチの理論的基盤となったのは、ハリデーの言語機能論とハイムズのコミュニカティブ・コンピテンスです。
「学習目的・到達目標」
コミュニカティブ・アプローチの学習目的・到達目標は、コミュニケーション能力の向上、意思疎通ができるようになることです。
日本でも「コミュニケーション能力」という言葉は耳が痛いほど何度も聞きますね・・・。
また、これはウイルキンズの概念・機能シラバスの影響を受けています。
さらに、何を学習するかは学習者のニーズが尊重されるのも特徴です。
- 「コミュニケーション能力の向上」
- 「概念・機能シラバス」
- 「学習者のニーズ」
「使用する教材」
コミュニカティブ・アプローチで使用する教材は、生教材(新聞記事やテレビのニュース)です。
- 生教材(新聞記事やテレビのニュース)
「指導・練習法」
インフォメーションギャップ(情報差)、チョイス(選択権)、フィードバック(反応)に注目します。これは現実のコミュニケーションに含まれるものです。
具体的には、ロールプレイ、ディスカッション、プロジェクト・ワーク、などを行います。学習者の発想を生かした、現実に近い場面を想定した教室活動です。
- インフォメーションギャップ(情報差)、チョイス(選択権)、フィードバック(反応)
- ロールプレイ、ディスカッション、プロジェクト・ワーク
「利点と欠点」
利点は、学習者のニーズに合わせて学習でき、学習したことを現実のコミュニケーションでも活用しやすいことです。これはオーディオリンガル・メソッドの特徴とは反対です。
欠点は、言語知識の体系的な学習がしにくい、正確さが向上しない、です。
- 学習者のニーズに合わせて学習できる
- 現実のコミュニケーションでも活用しやすい
- 言語知識の体系的な学習がしにくい
- 正確さが向上しない
2.「タスク中心の教授法」
オーディオリンガル・メソッドは言語の形式を重視(フォーカス・オン・フォームズ)し、コミュニカティブ・アプローチは言語の意味を重視(フォーカス・オン・ミーニング)します。
一方、タスク中心の教授法は、オーディオリンガル・メソッドとコミュニカティブ・アプローチの利点を両方取り入れた教授法です。
そのため、タスク中心の教授法は言語の意味を中心に教授活動を行う一方で、言語形式にも注目します(フォーカス・オン・フォーム)。
「学習目的・到達目標」
学習目的・到達目標は、課題遂行能力の向上です。
- 課題遂行能力の向上
「使用教材」
使用教材は、タスク・シートがよく用いられるのが特徴です。
- タスク・シート
「利点と欠点」
利点は、流暢さと正確さが両方学べます。つまり、コミュニケーション能力が向上し、なおかつ文法的な正確さも向上するということでしょう。
欠点は、言語を体系的に学習しにくいことです。
- 流暢さと正確さが両方学べる。
- 言語を体系的に学習しにくい。
「内容重視の教授法」
また、最近は内容重視の教授法である、内容言語統合型学習(CLIL)も注目されています。これはタスク中心の教授法に近いです。
この内容言語統合型学習(CLIL)の略語は「クリル」で、教科内容を非母語で学ぶことで、教科知識・語学力・思考力・コミュニケーション力を統合して育成する方法です。
「4つのC」が特徴です。
3.「ナチュラル・アプローチ」
ナチュラル・アプローチは、幼児の母語習得過程を参考にした、聴解優先の教授法です。テレルがクラッシェンのモニター理論を応用して生み出しました。
- 幼児の母語習得過程
- 聴解優先
- テレル
- クラッシェンのモニター理論
「指導・練習法」
適切な難度のインプットを与え、簡単な内容の応答練習を行います。
具体的にイメージしにくいのですが、以下の記事などが参考になるかもしれません。
「利点と欠点」
利点は、大量の理解可能なインプットを提供できること、緊張が少ないことです。欠点は、教師の発話が多くなる、チャレンジングな発話練習がないことです。
- 大量の理解可能なインプットを提供
- 緊張が少ない
- 教師の発話が多い
- チャレンジングな発話練習がない