日本語教育能力検定試験では「記憶」についての問題も出題されます。
少しややこしいので、記憶についての内容を簡単にまとめてみました。
記憶の仕組み
記憶の仕組みの流れは以下です。
- インプット(入力)
- 符号化
- 転送
- 貯蔵
- 検索
- アウトプット(出力)
長期記憶と短期記憶
記憶には長期記憶と短期記憶があります。この考え方を二重貯蔵モデル(dual storage model)と言います。提唱したのはアトキンソンとシフリンです。
1.長期記憶(long-term memory、LTM)
長期記憶は、保持時間が長く半永久的に保持される記憶のことです。
さらに、長期記憶は「宣言的記憶」と「手続き記憶」の2種類に分かれます。
1.宣言的記憶(declarative memory)
言葉にすることができる記憶です。「陳述記憶」とも呼びます。私たちが日常で記憶と呼ぶものはこの宣言的記憶を指すことが多いです。
一方、「手続き記憶」は「身体で覚えている記憶」のことで、口に出して説明するのが難しいです。
宣言的記憶には「意味記憶」と「エピソード記憶」の2つがあります。
意味記憶
単語の意味など、「知識」に関する記憶です。たとえば、レモンが意味するもの(黄色い、酸っぱいなど)の記憶です。
エピソード記憶
個人が経験した出来事に関する記憶です。たとえば、昨日彼女と神楽坂のレストランでフランス料理を食べた記憶です。
2.手続き記憶(procedural memory)
自転車に乗る方法やパズルの解き方などの反復的な行動により身体で覚えている記憶です。いわゆる「体が覚えている」状態ですね。言葉にすることが難しいのが特徴です。「非陳述記憶」とも言います。
「外国語能力」は、宣言的記憶が手続き的記憶に移行した状態と言えます。
手続き的記憶が一旦形成されると、自動的に機能し、長期間保たれます。
2.短期記憶(short-term memory、STM)
短時間保持される記憶のことです。現在では、ワーキングメモリー(作業記憶)として捉えることが一般的です。
ワーキングメモリーは、短い時間に心の中で情報を保持し、同時に処理する能力のことを指します。
ワーキングメモリーに保持された情報は何もしなければすぐに消えてしまいますが、工夫をすることで記憶を保持したり、長期記憶に転送できます。
この具体的な工夫は記憶ストラテジーと呼ばれます。いわゆる「記憶術」と似たものです。
記憶ストラテジーの内容は以下です。
記憶ストラテジー
1.チャンキング(chunking)
英語のチャンク(chunk=塊)からきた言葉です。あるものをいくつかのかたまりにして覚える方法です。一つ一つ覚えるよりも記憶に残りやすいです。
2.維持リハ―サル(maintenance rehearsal )
同じ内容を何度も繰り返すことです。忘れないよう、電話番号を何度も口にしたり、英単語を繰り返し書くなどです。
3.生成効果
自分で問題を作り、解いたりすることです。
4.体制化(organizational memory)
情報を分類し、整理することです。
5.精緻化リハーサル(elaborative rehearsal)
情報をイメージ化したり、すでに知っている知識と関連付けたりして覚えることです。
たとえば、鎌倉幕府の年号を「いい国(1192)作ろう鎌倉幕府」と覚えます。
*「チャンキング」と「維持リハーサル」は長期記憶にはなりにくいです。
まとめ
- 記憶の仕組みの流れは、インプット(入力)→符号化→転送→貯蔵→検索→アウトプット(出力)
- 記憶には長期記憶と短期記憶がある。この考え方を二重貯蔵モデルと言う。提唱したのはアトキンソンとシフリン。
- 長期記憶は「宣言的記憶」と「手続き記憶」の2種類に分かれる。宣言的記憶は言葉にすることができる記憶、手続き記憶は身体で覚えている記憶。
- 長期記憶には「意味記憶」と「エピソード記憶」の2つがある
- 短期記憶(ワーキングメモリー)は、短い時間に心の中で情報を保持し、同時に処理する能力
- ワーキングメモリーの記憶は、記憶ストラテジー(チャンキング、維持リハ―サル、生成効果、体制化、精緻化リハーサル)を利用して長期間保持できる