現代の私たちが「川(かは)」を声に出すと、発音は「カワ」です。ハ行音をワ行音で発音します。しかし、もともとはハ行音をワ行音では発音しませんでした。
このように、ハ行音をワ行音で発音する(「カハ」→「カワ」)音の変化をハ行転呼(はぎょうてんこ)と言います。
この音の変化は、10世紀末ごろから広がったそうです。
- かは(川) カハ→カワ
- こひ(恋) コヒ→コイ
- かほ(顔) カホ→カオ
ファと発音していた
平安時代初期では、ハ行音をファ行音(無声両唇摩擦音[ɸ])で発音していました。それが現在では、ワ行音(両唇接近音[β̞])で発音するようになり、ハ行点呼しました。
- は=ファ行音(無声両唇摩擦音[ɸ]) →ワ行音(両唇接近音[β̞])
ファ行音(無声両唇摩擦音[ɸ])とワ行音(両唇接近音[β̞])とは?
ファ行音は無声両唇摩擦音(むせいりょうしんまさつおん)と言います。発音記号は[ɸ]です。ロウソクの火を吹いて消したりするときの音に似ています。
一方、ワ行音は両唇接近音(りょうしん・せっきんおん)と言います。下唇と上唇が接近することで作られた隙間から生じる音です。発音記号は[β̞]です。
- ファ行音(無声両唇摩擦音[ɸ])
- ワ行音(両唇接近音[β̞])
奈良時代以前は両唇破裂音[p]
ちなみに奈良時代以前は、ハ行の音を両唇破裂音[p]で発音していました。
また、ファ行音(無声両唇摩擦音[ɸ])が語中・語尾に現れた場合は、軟口蓋接近音[ɰ]で発音されます。
- 奈良時代以前=両唇破裂音[p]
- ファ行音[ɸ]が語中・語尾に現れた時=軟口蓋接近音[ɰ]
まとめ
- 奈良時代以前=両唇破裂音[p]
- 奈良時代から平安時代=ファ行音(無声両唇摩擦音[ɸ])
- 平安時代以降~現代=ワ行音(両唇接近音[β̞])
- ファ行音[ɸ]が語中・語尾に現れた時=軟口蓋接近音[ɰ]