ヒューマニスティックな教授法は、ひたすら暗記を繰り返すような、機械式・軍隊式のオーディオリンガルメソッドへの反発から生まれた教授法の1つです。ちなみにもう1つは学習者中心の教授法です。
この教授法の特徴は、言語の能力を高めるだけでなく、人間的な成長も目指す点です。
オーディオリンガルメソッドが非人間的な教授法(機械的・軍隊的)だとすると、ヒューマニスティックな教授法は人間的なものだと言えるでしょう。
- オーディオリンガルメソッド=非人間的
- ヒューマニスティックな教授法=人間的(ヒューマニスティック)
ヒューマニスティックな教授法には、「サイレント・ウェイ」「コミュニティ・ランゲージ・ラーニング(CLL)」「TPR」「サジェストペディア」の4つがあります。
1.サイレント・ウェイ(silent way)
「silent(沈黙)」とあるように、教師はできるだけ沈黙するのが特徴の教授法です。
心理学者のガッテ―ニョが考案しました。
発音を色分けで視覚的に示したサウンド・カラー・チャートや、それを指す際に用いるポイ
ンター(指示棒)、語彙・文型の導入や練習に使うロッドという独自の教材を用います。
利点は、記憶の促進が高まる、リラックスして参加できる、集中して参加できるです。
以下がサイレントウエイの動画です。
2.コミュニティ・ランゲージ・ラーニング(CLL)
学習者の人間的成長と、学習者が属するコミュニティの成長を目指す教授法です。
心理学者のカランが、カウンセリングの理論を基にして提唱しました。
教師をカウンセラー、学習者をクライアント、教室を1つのコミュニティとみなすのが特徴です。
以下の動画は、英語の学習でのコミュニティ・ランゲージ・ラーニングの様子です。
3.TPR(全身反応教授法、トータルフィジカルレスポンス)
学習者が教師の指示に対して全身で反応することで言語を習得する教授法です。
たとえば、教師が「立って」と言うと学習者は立ち上がり、「座って」というと学習者は座ります。
アメリカの心理学者アッシャーが提唱しました。
利点は、聴解力を伸ばすことができる、発話を強制されないのでストレスが少ない、母語の介入がない、学習者は学習した内容を長期にわたって覚えていることができる、などがあげられます。
欠点としては、大人の学習者には用いるのが難しい(幼稚だと思われる)です。確かに子どもに向いている教授法かもしれませんが、大人がやっても効果はあるような気がします。
以下がTPRを行っている動画です。
4.サジェストペディア(suggestopedia)
暗示学(サジェストロジー)を理論的根拠にした教授法です。
ブルガリアの精神科医ロザノフが、精神療法の手法からヒントを得て開発しました。
潜在意識を用いて行う超学習で得た知識と、顕在意識を用いて行う通常の学習で得た知識が融合することを重視しています。
学習者の潜在能力の開発が目標だとされます。
授業は、「プレセッション」「コンサートセッション」「ポストセッション」の3部から成ります。
その中でも「コンサートセッション」がメインの授業となり、授業中は教師がクラシック音楽に乗せてモデル会話を朗読します。
以下の動画は、日本語学習のコンサートセッションの様子です。なかなか面白いですね。