オーディオリンガルメソッド(アーミーメソッド)は、日本語教育能力検定試験によく出題されます。
そこで、その概要や教え方などを紹介します。
*海外では、オーディオリンガルメソッドはアーミー・メソッドとイコールの扱いをされることが多いようです。
「オーディオリンガルメソッドとは」
オーディオリンガルメソッドは、アーミー・メソッド、またはNew Keyとも言われます。外国語を教える方法です。
言語は「強化」によって学習できるという行動主義理論に基づきます。
「直接法との違いは?」
オーディオリンガルメソッドは、直接法と似ています。
生徒の母国語は使用せず、学習する言語を使用して文法や言語を教えます。
その一方で、オーディオリンガルメソッドは語彙の指導に焦点を当てません。この点が直接法と異なります。
オーディオリンガルメソッドは文法の反復練習が中心です。教師が模範例を示し、それを生徒が反復します。それから、教師は新しい単語を示し、生徒はまた繰り返します。
「答えは決まっている」
オーディオリンガルメソッドは答えが一つに決まっています。
教師は、特定の回答を生徒に期待します。生徒の回答が違うと注意されます。
この点が、コミュニケーションを重視する言語教育(コミュニカティブ・アプローチ)とは正反対です。
「具体例」
例は以下です。1つのセッションに複数の反復練習を組み込んでいます。
先生:机の上にコップがあります。繰り返してください。
学生:机の上にコップがあります。
先生:スプーン。
学生:机の上にスプーンがあります。
先生:辞書。
学生:机の上に辞書があります。
先生:椅子の上。
学生:椅子の上に辞書があります。
「ルーツ」
オーディオリンガルメソッドのルーツは、3つあります。
1.「先住民の言語の理解」
20世紀初頭のアメリカの言語学者の最大の関心は、アメリカのすべての先住民の言語を詳しく理解することでした。
しかし、先住民の言語を理論的に説明できる人が不足していたため、観察して理解する必要がありました。このため、口頭言語(oral language)に重点が置かれました。
2.「行動主義心理学」
同時期に、スキナーのような行動主義心理学者は、すべての行動(言語を含む)は、反復と正・負のフィードバックで学習できると考えました。
3.「アーミーメソッド」
第二次世界大戦により、世界中に多くのアメリカ軍を配置する必要がありました。
そのため、基本的な会話が最低限できるよう、兵士を訓練しなければいけませんでした。
「人気が落ちる」
1950年代後半、チョムスキーなどの言語学者によって、批判されるようになりました。行動主義心理学と言語学習の関連性が疑問視され、科学的信頼性が疑われました。
ただし、多くの批判にもかかわらず、現在でもオーディオリンガルメソッドは用いられています。基本の授業ではなく、個人的な授業で使用されることが多いようです。
「主な特徴」
- 各スキル(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)は、別々に教えます。
- 作文と読解のスキルを軽視しませんが、全体的にはリスニングとスピーキングのスキルを重視します。
- 特にリスニングを重視します。スピーキングの習熟度を高めるのに重要だからです。
- 教室で使用できるのは学習する言語だけ(母国語は禁止)です。ただし、この母国語の禁止は、最近では厳しく言われなくなっているようです。
「テクニック」
- リスニング→スピーキング→リーディング→ライティングの順番で教えます。
- 学習言語は、よく使われる語彙と文の形を取り入れた会話を通して教えます。
- 生徒は、会話を1行ずつ暗記します。
- 生徒は、教師かテープが話す学習言語を注意深く聞き、模倣します。
- モデルとして、ネイティブスピーカーの発音を重視します。
- 会話は、フレーズと文の繰り返しを通して学習します。最初はクラス全体、次に小さなグループ、最後に個々の生徒の順番で学習します。
- 読み書きはオーラルレッスンの後に導入されます。前回の授業で学んだオーラルレッスンの内容を、スピーチとライティングの教材にします。
- ライティングの初期の段階では、学習済みの会話の書き起こしだけ行います。
- 学習者が基本構造を学習したら、オーラルレッスンに基づいて作文を書きます。
「メリット」
- リスニングとスピーキングのスキルを向上できる。特に、リスニングの能力が発達します。
- 視覚教材を効果的に使用できます。
- 大人数でも効果的に簡単にできます。
- 正しい発音と会話の構造が習得できます。
- 教師が中心になって主導します(教師主導の方法)
- 生徒は決まった教材や学習方法に従います。
「デメリット」
- 多くの学者が、行動主義的な学習方法の問題点を指摘しています。
- コミュニケーション能力を軽視しています。
- 言語形式だけを重視し、言語の意味を軽視しています。
- 4つのスキルを平等に扱っていません。
- 教師主導の方法です。
- パターン練習と、ドリル、暗記が中心の機械的な方法です。
- 学習者は受動的な役割を果たします。学習者は自律的な学習ができません。
まとめ
以上です。個人的な感想では、授業の最初の練習部分で使えそうと思いました。最初はどうしても、基本的なフレーズを覚える機械的な練習が多くなるからです。ただし、このやり方ばかりしていては、生徒も退屈してしまうでしょう。
また、すでに書いてありますが、生徒が大人数の場合に使えます。特に、外国で教えるときは、大人数になることがあります。20人~30人(それ以上)ということもあるでしょう。そんなときは、役に立つ方法なのかもしれません。
参考記事:Audio-lingual method