「平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験問題」の試験Ⅰの解説です。
試験Ⅰ
問1の答え:4
調音法の違いを答える問題です。
[ɾ]だけはじき音です。はじき音は、舌を歯茎または口蓋にはじくことで生じる音です。
ほかの[ɸ]、[ç]、[s]、[θ]は摩擦音です。
以下の図を見るとわかりやすいです。
問2の答え:2
4月だけ、月と年で読み方が違います。
- 4月(しがつ)
- 4年(よねん)
問3の答え:2
接辞の「たち」だけ品詞が変化しません。
- 子ども(名詞)
- 子どもたち(名詞)
ほかの接辞は品詞が変化します。
問4の答え:4
「ある」だけナイ形の活用が異なります。
- ける→けらない
- みる→みない
- はしる→はしらない
- ある→ない ×あらない
- おきる→おきない
ちなみにそれぞれの動詞の活用は以下です。
- ける=グループ1(五段活用)
- みる=グループ2(上一段/下一段活用動詞)
- はしる=グループ1(五段活用)
- ある=グループ1(五段活用)
- おきる=グループ2(上一段/下一段活用動詞)
問5の答え:5
連体詞(れんたいし)に関する問題です。
連体詞は活用がなく、名詞を主に修飾します。「あの、この、いわゆる、あらゆる、我が、大きな、小さな、おかしな、いろんな」などが連体詞です。
これは少し難しいと感じました。
- この→活用できない
- あらゆる→活用できない
- いろんな→活用できない
- わが→活用できない
- 同じ→活用できる(同じだ)ので、「同じ」は「ナ形容詞(形容動詞)」と考えられるようです。
ただし、「同じ」はナ形容詞の中でも少し特殊なようです。
たとえば、ほかのナ形容詞だと名詞を修飾する時に「~な」になります(きれいな本)が、同じは「同じな」とはなりません(同じ本)。
- きれい→きれいな本
- 同じ→同じ本
連体詞の特徴や、主要な連体詞を覚えておくと解ける問題かもしれません。
問6の答え:1
動詞の自動詞・他動詞に関する問題です。
- 走る→走らす で他動詞
- 渡る→渡す で他動詞。
- 通る→渡す で他動詞。
- 回る→回す で他動詞。
- 移す→移す で他動詞。
自動詞「~る」→他動詞「~す」ですが、「走らす」だけ「~らす」で形が異なります。
ちなみに、「廊下を走る」の「を」は「通過のを」で、他動詞のをではありません。
問7の答え:3
複合動詞の問題です。
3の「噛み切る」だけ「切断」の意味です。
ほかは「完遂(行為が完結する)」の意味です。
問8の答え:1
形式名詞の問題です。
1の「~遅刻した わけ だ。」だけ「理由」に置き換えられます(~遅刻した 理由 だ。)。
ほかの名詞は具体的なものを指し示す名詞に置き換えられません。
問9の答え:4
4の「読んでもいい」だけ勧め・忠告の意味が薄いですね・・・。
問10の答え:2
格助詞「から」の用法です。
読むと直感的に2だけ違うというのがなんとなくわかりますが、説明するのが難しいですね・・・。
2だけ「順序の始点(呼ばれた人から~)」の意味があります。ほかは後ろに場所が来ています。
問11の答え:3
「~っぱなし」についての問題です。
これは難しくて正直間違えました・・・。
説明も難しいのですが、3だけ「歌いっぱなし」と、「~っぱなし」をする動作の主体が人です。ほかはモノが主体です。ただこれは正しいかわかりません・・・。
問12の答え:3
「~ことにする」の用法の問題です。これも難しい問題です。
「~ことにする」は、「自分の意志による決定」を意味します。選択肢にある、ジョギングをする、車を買い替える、明日やる、帰ることにするは自分の意志による決定です。
しかし、3の「母親が病気だということにする」は「本当は違うけど、そのようなふりをする」の意味です。母親は本当は病気ではないのに、病気であるかのようなふりをしています。
問14の答え:5
「ので」の前件と後件の関係の問題です。
これも難しい問題です・・・。
5だけ、前の文と後ろの文で、時間の順序が逆だと思います。そのほかの文は、前の文と後ろの文で時間の順序が一致しています。
たとえば、「友達が来る」(前の文)のは3時で、「部屋を掃除した」(後の文)は2時と考えられます。
それに対して、「子どもがあまりに泣くので、お菓子をあげた」は、「子どもがあまりに泣く」(前の文)は2時で、「お菓子をあげた」(後の文)は2時半だと考えられます。
問15の答え:2
言語の類型に関する問題で、知っていればわかる基本的な問題です。
中国語だけ孤立語で、ほかは膠着語です。これは形態的類型論から見た言語のタイプです。
- 韓国語=膠着語
- 中国語=孤立語
- トルコ語=膠着語
- 日本語=膠着語
- フィンランド語=膠着語