日本語教育能力検定試験に出る、ナチュラルアプローチを紹介します。
ナチュラルアプローチとは?
ナチュラルアプローチは、1970年代後半から1980年代初頭にスティーヴン・クラッシェン とトレイシー・テレルによって開発された言語教育の方法です。
教室での自然な言語の習得を目標とします。そのため、文法の勉強や間違いの訂正は重視しません。また、学習環境はできるだけストレスのないものにします。
学生は、大量で簡単な言語学習を行います。発話は強制されませんが、自然な発話が期待されます。
ナチュラルアプローチの目的
ナチュラルアプローチは、コミュニケーション能力を身に付けることを目的とします。また、主に初心者が対象です。
ナチュラルアプローチの基本原則
テレルによると、ナチュラルアプローチには3つの基本原則があります。
- コミュニケーションに焦点を当てる。
- 発話を強制しない。徐々にできるようになるのを期待する。
- 初期の発話は自然な段階で進む(はい/いいえ/無回答→一単語の回答→複数の単語→短い文章→完全な文章)。
教師の役割は?生徒の不安を少なくするなど
また、ナチュラルアプローチは、教師の役割も重要です。
教師は、生徒に面白くてわかりやすく教えます。生徒の不安をできるだけ少なくし、やる気を起こさせるような状況を教室内に作り出すことを目指します。
さらに、間違いの訂正や、ドリル、文法の学習は重視しません。
新しい文法よりも、幅広い語彙を教えます。
クラッシェンのモニター仮説との関係
テレルはもともと、特定の理論モデルに頼ることなくナチュラルアプローチを考えました。
しかし、その後クラッシェンと共同作業を行うようになり、ナチュラルアプローチがクラッシェンのモニター仮説の応用と見なされるようになりました。
4つの教室活動
テレルは、語学習得(語学学習ではない)に適した4つの教室活動を提案しています。
1.「コンテンツ」
文化、主題、新しい情報、読み物などを使用した活動です。たとえば、教師は目標言語と現地の文化に関する興味深い逸話を語ります。
2.「ヒューマ二スティック」
生徒の意見や経験などを重視します。たとえば、学生に好みの音楽、住む場所、服、髪型などを話すよう求めます。
3.「ゲーム」
学習言語を使用してゲームを行います。
たとえば、質問をして答えを当てるゲームです。
A:それは服ですか?
B:はい。
A:それは男性用ですか、それとも女性用ですか?
B:男性用です。
A:それはズボンですか?
B:はい。
A:それは茶色ですか?
B:はい。
A:それはケンのズボンですか?
B:はい。
4.「問題解決」
問題を解決するために、学習言語を使用して情報を探します。
アメリカのスペイン語教師に人気があった
ナチュラルアプローチは、特にアメリカのスペイン語教師によく用いられていたようです。
ナチュラルアプローチのデメリット
正確性に欠ける
目標言語が流ちょうに話せるようになる一方、文法などの言語使用の正確性に関わる能力は身につかない可能性があります。
準備が大変
教師はさまざまな授業道具を集め、それを適切に使用することが期待されます。そのため、特別な教育設計が必要です。
まとめ
- スティーヴン・クラッシェンとトレイシー・テレルによって開発された言語教育の方法
- 教室での自然な言語習得とコミュニケーション能力を身に付けることが目標
- 文法の学習や間違いの訂正は重視しない。
- 学習環境はできるだけストレスのないものにする。
- 発話を強制しない。自然な発話が期待される。
参考記事:Natural approach / Natural Approach